おっさんのウエイトマネジメント

おっさんの体重/体型管理用の記録/備忘録

ダイエット情報について

f:id:meta_metabo:20200131114559j:plain


マスメディアやネットにはダイエット情報が氾濫しています。私たちはそれらの情報とどう向き合うべきでしょうか。

 
マスメディアがフェイクの温床であることは、ネットを活用する人々にとっては特に異論はないと思います。同様にネットもフェイクの温床ですが、カウンターフェイクの自浄作用がマスメディアより大きいと思います。

ですがネットも私たちが簡易にアクセスする領域では低質な情報に支配されています[1]。このModaveらの分析では一般人がアクセスするダイエット情報は政府、医療、大学といった高品質な情報源ではなく、低品質な情報源である可能性が高いことが示されています。

リテラシー、ニューメラシー(情報処理能力、数量的情報処理能力)の欠如は本質的な問題であり、その改善なくして解決は導かれません。ヘルスリテラシー(健康情報に関する情報処理能力)はダイエット情報のみならず高齢化社会を迎えた日本においてはとても重要です。

このような問題を抱えた人々が、《あるダイエット情報》を目にし実践したところ、痩せたとします。すると彼らの一部はそのダイエット情報を信用してしまいます。その個人においてその情報は有用であったことは真ですから、ここまでなら問題は小さいと思います。

ですがその情報の《再現性》《普遍性》《公益性》は不明です。またその手段が減量の原因であるかも不明です。手段と結果の関係が《因果関係》なのか《相関関係》なのかも不明です。

彼らは《主観的事実:n=1》を他者も共有できる《客観的事実:95%CI》として錯覚することがあります。そしてその情報を他者と共有しようと無分別に情報拡散をはかる時、問題は大きくなります。主観的事実のような事例証拠が科学的には弱い証拠であるということをしりません。

彼らの一部は確証バイアスに陥ります。実体験を裏付ける情報ばかりを積極的に求め、異なる情報には消極的、あるいは排除する傾向にあります(チェリーピッキング)。SNSなどネットを介してこの傾向はより強くなっているように思います(エコーチェンバー効果)。

また往々にして彼らとは議論が成り立ちません。主客の分離が不十分なことから批判を自己批判と混同し感情的になりがちです。分不相応な高い自己評価(とその承認欲求)や自尊心が拍車をかけます(ダニング=クルーガー効果)。

彼らが実践した《あるダイエット情報》の多くはメディアで活躍する《専門家の意見》です。代表的な専門家には医師、栄養士、フィットネストレーナー、アスリートなどが挙げられます。私達の多くが情報を担保する存在(権威)と位置づけています。

しかし《専門家の意見》それ自体は科学的証拠の強さとしては最弱に該当します(無価値という意味ではありません)。

《専門家である》《有資格者である》ということは必ずしも情報の信用性を高めるわけではなく、《権威に訴える論証》は誤謬を含む可能性もあります。メディアでは医師がダイエットの専門家のように扱われていますが、例えば医師は必ずしも栄養学に精通しているわけではありません[2,3,4]。

またその専門家の根拠が査読論文ではなく本屋に並ぶ商業本(自著)であるならば利益相反によってより弱くなります(あるいは非科学に該当)。

では専門家が論文を引用しているならば、その専門家の信用性は高まるでしょうか。

いいえ、論文引用も必ずしも信用を高めません。科学的な証拠には質的階層があり、彼らは弱い証拠をもって持論の正当性を偽証することが少なくありません。例えば食では反食品添加物、反人工甘味、反遺伝子組換えなどから、反ワクチン(HPVワクチンなど)、地球温暖化懐疑論まで多岐に渡る分野でみられる誤謬です。

このようにダイエット情報は《低質な専門家》と《情報処理能力が低く自己評価の高い一般人》の悪循環によって大きく質を下げていると思います。

メディアを支配する低質な情報は消費者に消費の最大化を促すのが目的ですから、科学/論理的欠陥を厭わない美辞麗句で虚飾されています。それに対しては面倒で難解でも科学/論理的に整合性のとれた情報源(学術機関)にアクセスすることは大事だと思います。

そして主観に対しても客観に対しても《程よい懐疑的姿勢》を持つことはとても大事だと思います。特に感情が大きく動く時ほど一度落ち着いて一次情報を精査すべきだと思います。

 

Reference

1. Modave F et al. Analysis of the accuracy of weight loss information search engine results on the internet. Am J Public Health. 2014 Oct

2. Orimo et al. Nutrition education in medical schools in Japan: results from a questionnaire survey. Asia Pac J Clin Nutr. 2006

3. Frantz DJ. Cross-Sectional Study of U.S. Interns' Perceptions of Clinical Nutrition Education. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2016 May

4. Neal D. Barnard. Ignorance of Nutrition Is No Longer Defensible. JAMA Intern Med. 2019 Jul