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ダイエットサプリで痩せる?

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ドラッグストアやネットストアにはダイエットサプリが溢れていますが、これらは本当に減量に効果があるのでしょうか?

 
結論から言うと、市販のダイエットサプリに減量を促進する効果は殆どなく、《費用対効果は最小》といえるでしょう。

当初はのように各サプリメント別(成分別)にピックアップして記事にしようと思っていましたが、(面倒くさくなったので)まずは様々なサプリメントをまとめた総論記事にしたいと思います。その上で、今後興味深い研究が発表されたり、私の中で証拠の解釈に変化が起これば個別に記事にする……かもしれません。

総論的に展開する上ではこれまでのサプリメントと減量に関する統合分析資料(系統的レビューなど)を基にするのが適当だと思うので、幾つか研究をとりあげてみます。

2004年のPittlerの系統的レビューでは《体重を減らす補助をするという証拠に説得力はない》と結論付けています[1]。

2011年のPoddarらの系統的レビューでは《ヒトの減量に対する栄養補助食品の効果に関するデータは不足しており決定的な証拠を提供していない》。このことから《非処方の栄養補助食品は減量の補助として強く推奨することはできない》と結論づけています[2]。

Whartonらの2006から2016年までの文献の批判的レビューでは《栄養補助食品は臨床的に有意な減量利点を提供しない》と結論づけています[3]。
※臨床的とは、アメリカ食品医薬品局FDA)や欧州医薬品庁(EMA)の減量の医薬品承認には有効性の閾値が含まれていますが、本レビューで検討した栄養補助食品はこれらの閾値に達していないということです

公的機関では減量に対するサプリメントの効果をどう評価しているでしょうか。

日本の公的情報では厚労省所管の国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報で各成分(素材情報)が確認できます。企業やサイトの商業広告を鵜呑みにせず、一度ここで有効性情報を精査すれば無駄な出費は抑えられると思います。ただ軽く調べた限り、公的情報では《減量とサプリメント》にカテゴライズされたページは見当たらず確認するのが面倒です。

一方、サプリメント大国であるアメリカでは保健福祉省公衆衛生局傘下の国立衛生研究所(NIH)のDietary Supplements for Weight Lossに《減量とサプリメント》情報がまとめられています。
※NIHへのリンクは情報の質/量的に医療専門家向けにしていますが、消費者向けもあります。

NIHの成分一覧によると、殆どの成分に関する研究の質/量には問題があり、体重への影響は《最小》あるいは《なし》です。一覧にある成分はCMなど広告でよく目にする大手サプリメント企業の商品やネット検索上位の商品の構成成分ですから、その商品の有効性や費用対効果がいかほどか推し量れます。
※NIHの情報を踏まえた最近のレビュー論文では有効性及び潜在的な副作用や臨床診療における薬物との相互作用、これらに関する科学的証拠が不十分であり、より堅牢な無作為化比較試験が必要だとまとめています[4]。

以上が冒頭の結論の根拠になります。多くのダイエッターが減量用サプリメントに期待するような効果は現時点では科学的にサポートされていません。個人的に痩せる為に何かを食べるという思考は生理的にも倫理的にも欠陥があると思っています。

 

本記事の主題は以上ですが、以下は個別の成分に関する情報精査の一例です。《減量効果は最小》この僅かな可能性を針小棒大に扱うのがサプリメント業界です。そして少なくない人がその具体的な効果の大きさを見ぬまま《僅かでも効果があるなら》とコストをかけてしまいます。

一見良心的に見えるサプリメント解説記事も、《サプリメントは補助であり過剰な期待はするべきではない》といいつつ、この最小の効果に《試してみる価値を匂わす》ことが少なくありません(そしてそこには特定の商品へのリンクが添えられています)。
※ブログを始めるに当たって登録グループ『ダイエット』内のブログをランダムに読んでみましたが、残念ながら幾つかの記事では同様の手法がとられていました。

《最小の効果》とはどれくらいの大きさなんでしょうか。研究によって示された効果が統計的有意(統計的に意味のある値)だからといって、それは実益を表すわけではありません。大事なのはその《効果の大きさが実益として反映されるか》だと思います。

例えばNIHはカルニチンは『追加研究が必要』としつつも、Pooyandjooらの小規模な系統的レビュー/メタ分析を根拠に『わずかな減量の可能性あり』と評価しています[5]。この《わずか》についてカルニチンの根拠論文を例に踏み込んで精査してみましょう。

9つの臨床試験911人の被験者)、試験期間は30~360日、摂取量は1.8~4g/日の統合分析において、プラセボとの平均差は1.33kgです。そしてこの減少の大きさは時間と共に減少し効果は持続的ではありませんでした。

ここで代表的なサプリメントブランドであるネイチャーメイドL-カルニチンを例に試算してみましょう。75粒入り(1日3粒目安)で1,880円ですが、L-カルニチンは3粒あたり510mgです。[5]と照合すると、1ヶ月~1年間、目安量の3倍~8倍摂取して(コストは最低でも月に7,520円+税)体重が1kg強余計に減るかもしれないということです。

一歩踏み込んで論文を読んでみると《わずかな減量の可能性》の意味する効果の大きさと、そこに掛けるコストの関係性が浮き彫りになります。また更に踏み込んで情報精査をすると、多くの日本人においてはこの小さい効果すら消失する可能性が見いだせます。

2019年のAskarpourらの系統的レビュー/メタ分析では、32件の研究の分析の結果、体重に-1.1kgの有意効果が示されました[6]。ただし、《BMIが25未満の被験者では体重は有意に変化しませんでした》。
※体脂肪は6件のRCTで-1.1kgで有意ですが摂取量<2g/dayでは有意差はありませんでした。
体脂肪率を調査した6件では有意差はありませんでした。
※体重の分析の対象研究には不均一性が認められます


つまり肥満者には1kg程度のベネフィットがあるかもしれないが(しかし何故か体脂肪率は減らないが)、非肥満の男女が美容体重を目指す上では《効果は見込めない》と解釈できます。

以上、一歩踏み込んだ情報精査の一例でした。こういう作業は面倒ですしある程度の知識も求められますが、商業広告、アフィリエイトを鵜呑みにせず懐疑的姿勢をもって情報にあたると良いと思います。

■Reference

1. Max H Pittler and Edzard Ernst. Dietary supplements for body-weight reduction: a systematic review. Am J Clin Nutr. 2004 Apr

2. Poddar K et al. Nutraceutical supplements for weight loss: a systematic review. Nutr Clin Pract. 2011 Oct

3. Wharton S et al. The safety and effectiveness of commonly-marketed natural supplements for weight loss in populations with obesity: A critical review of the literature from 2006 to 2016. Crit Rev Food Sci Nutr. 2019 Mar

4. Barrea L et al. Nutritionist and obesity: brief overview on efficacy, safety, and drug interactions of the main weight-loss dietary supplements. Int J Obes Suppl. 2019 Apr

5. Pooyandjoo M et al. The effect of (L-)carnitine on weight loss in adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Obes Rev. 2016 Oct

6. Askarpour M et al. Beneficial effects of l-carnitine supplementation for weight management in overweight and obese adults: An updated systematic review and dose-response meta-analysis of randomized controlled trials. Pharmacol Res. 2020 Jan