おっさんのウエイトマネジメント

おっさんの体重/体型管理用の記録/備忘録

ダイエットとリバウンドについて

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2020/5/22の記事を最後にブログを放置していましたが、雑事にかまけて体型への関心を失い、体重/腹囲は随分増えました。

残念なことに美醜への関心がさらに低下しており再度痩せる意欲は極めて低いです。しかし、座った時の腹部の圧迫感、入らなくなったタイトなスーツ群、相方さんの生暖かい目線、この辺には対処しないわけにも行きません。

仕方ないのでまたダイエットしようと思います。一体全体私はこのダイエットとリバウンドを何度繰り返すのでしょう。ブログタイトルが泣いています。

やるやる詐欺に近い宣言だけではつまらないので、今回はこの《ダイエットとリバウンドの繰り返し》について私見を述べたいと思います。

 
はじめに、《ダイエットとリバウンドの繰り返し》を掘り下げるには、情報量が膨大になり幾つかのトピックに分ける必要性があり億劫です。なので今回は体組成に関して浅く取り上げたいと思います。

体重の減量と回帰を繰り返すWeight Cycling(Yo-Yo Dieting)は《筋肉が落ちて痩せにくくなる》《WCを繰り返せば繰り返すほどより痩せにくく太りやすくなる》といった負の側面が強調されることがあります。

幾つかの研究をみてみましょう。

2011年のBeaversらの研究では減量後に体重が増える際、除脂肪量の回復率が低いことが示されています[1]。この論文を基にすれば、増減を繰り返すことで脂肪と除脂肪比の悪化が推測できます。
※本研究を背景に減量を繰り返すほどにサルコペニア肥満が進行すると結論付けることはできません。本研究のデザインには幾つか欠陥があると思います。例えば《リニアに変化しない体組成》において10kg減量時の除脂肪量の変化と3kg増量時の変化を比較する点、増減量時の除脂肪量管理が不十分である点など複数挙げられます。

では実際にWC履歴が多い人には体組成比の悪化が認められるのでしょうか。

2019年のRossiらの肥満者を対象にした研究では、WC履歴の多い者(WC≧6)は少ない者と比較して、筋量/力の低下、サルコペニア性肥満の増加と相関が確認されました[2]。
※WCはその性質的に横断的、縦断的な疫学研究にならざるを得ません。したがって本研究で示されたのは相関関係であり因果関係ではありません。体組成比に影響を与える因子は様々であり、それらの因子を調整した場合、相関が弱くなる可能性は十分あります。またWCは定義が曖昧で研究によって基準が異なることにも注意が必要です。

では度重なるWCは次回の減量の障害となるでしょうか。肥満者の『私は度重なるダイエットで代謝が悪くなっているから痩せにくい』という言い訳は成り立つでしょうか。

Masonらの研究によると重度のサイクラー(9kg以上のWCを3回以上)や中度のサイクラー(4.5kg以上のWCを3回以上)はWC未経験者と比較して、ベースラインの体重が重く代謝プロファイルは劣っていましたが、生活の改善や食事/運動療法の効果が妨げられることはありませんでした[3]。

つまり上記の言い訳は成り立ちません。私の去年のダイエットとその後のリバウンドはこれから行うダイエットにおいて足枷にはならないようです。そもそも《個人的には》[1,2,3]のような証拠にはあまり関心がありません。交絡因子は基本的な除脂肪量管理で調整できると思っているからです。


体組成への影響に関して、例えば超低カロリーダイエット(Very-Low-Calorie Diet:VLCD*)など急激なダイエットは非VLCDと比較して除脂肪量を多く損失する可能性があります[4]。

[1,2,3,4]のような証拠は体組成、特に骨格筋への負の影響はダイエット&フィットネス界隈では強調され、予防策として細やかな運動/栄養管理が推奨されていたりします。

しかしVLCDでも減量の6割以上は脂肪であるように[5,6]、ダイエット法によらず減量時に損失する体組成の多くは脂肪であり『○○すると筋肉が大きく減って脂肪はあまり減らない』といったダイエット情報は証拠に裏付けられていません。
※ VLCDは早急な減量が必要な肥満者において医師の監督下で実施される食事療法です。

僅かに除脂肪量の損失量が多くなる程度の話であり、大抵の場合、減量後の脂肪と除脂肪量比では除脂肪量は増加しています。除脂肪組織の損失においては臓器やあるいは筋中の除脂肪量の影響が過大評価されてる可能性すらあります[7]。

確かに体重/体型が審美/機能的評価を左右する競技、高齢者や成長期の若年層、運動や栄養に関する知識/リテラシーが乏しい層などでは減量時の除脂肪量管理は重要であり、可能な限り負の影響を予防する方が好ましいです。しかし、ヒトにおける証拠は十分とは言えませんが、トレーニング中止後に損失した骨格筋量はトレーニング再開後に素早く回復する可能性があります[8,9]。

健康な成人で脱初心者レベル程度でもウエイトトレーニング経験を持つ人にとって、ダイエット&フィットネス界隈でことさら強調される骨格筋への負の影響は、減量後の短いメンテナンス期間の対処で早期に取り戻せる可能性がある、ということです。

《骨格筋減少を予防する》《骨格筋回復へ対処する》これらを二項対立的にあるいは前者を過大評価するべきではないと思います。この過大評価を基にした推奨は時に対象者の自由性や柔軟性を損なう場合があります。
※健康に関して《予防に勝る治療なし》という姿勢を批判する意図はありません。

ダイエット&フィットネス界隈の情報は仮にそれが科学的根拠に基づいていたとしても、その効果量を実益として反映できるか、その情報が担う範囲はどういった対象であるのか、見極める必要があると思います。

というわけで体組成に関連するWCの影響は《個人的には》あまり気にしていませんが、リバウンド過程での慢性的な高エネルギー摂取は好ましくないと思っています。その辺の改善は今後の課題だと思っています。

 

■Reference
1. Beavers KM et al. Is lost lean mass from intentional weight loss recovered during weight regain in postmenopausal women?. Am J Clin Nutr. 2011

2. Rossi AP et al. Weight Cycling as a Risk Factor for Low Muscle Mass and Strength in a Population of Males and Females with Obesity. Obesity (Silver Spring). 2019

3. Mason C et al. History of weight cycling does not impede future weight loss or metabolic improvements in postmenopausal women. Metabolism. 2013

4. Chaston TB et al. Changes in fat-free mass during significant weight loss: a systematic review. Int J Obes (Lond). 2007 May

5. Burgess NS. Effect of a very-low-calorie diet on body composition and resting metabolic rate in obese men and women. J Am Diet Assoc. 1991 Apr

6. Eston RG et al. Effect of very low calorie diet on body composition and exercise response in sedentary women. Eur J Appl Physiol Occup Physiol. 1992

7. Abe T et al. Body Fat Loss Automatically Reduces Lean Mass by Changing the Fat-Free Component of Adipose Tissue. Obesity (Silver Spring). 2019 Mar

8. Staron RS et al. Strength and skeletal muscle adaptations in heavy-resistance-trained women after detraining and retraining. J Appl Physiol (1985). 1991 Feb

9. Gundersen K. Muscle memory and a new cellular model for muscle atrophy and hypertrophy. J Exp Biol. 2016 Jan